写真:横山ダム景観
写真:横山ダム景観

国土交通省 中部地方整備局様

ダム点検 水中ROV点検サービス
危険で人が潜れない箇所を安全に点検。高画質映像と画像鮮明化技術で、不具合の原因究明をサポート。

課題

数年間隔で破損が起こる横山ダム「主放流予備ゲート」の防水用「水密ゴム」の状況確認は、潜水士では危険が伴い映像も不鮮明。水密ゴムの不具合の原因が特定できない。

解決策

水中ROVの活用で、潜水士よりも長時間にわたって高精細画像の撮影を実施。画像鮮明化技術で撮影映像から原因究明。

原因はゲートのローラー当たり面の腐食・剥落でした。鮮明化する前の撮影映像は強烈な濁りで詳細がわかりにくかったのですが、鮮明化を施した後は明確に異常箇所が確認できました。

国土交通省 中部地方整備局 防災グループ 防災室
調整係長 下田 貴之様
※所属は2019年9月現在のものです。

背景

老朽化しつつある日本のダム。岐阜・横山ダムの点検を実施

日本の既設ダムは近年、半数以上が建設後30年以上を超え、老朽化しつつあり、対応が迫られています。国土交通省 中部地方整備局では早くからこの動きを捉え、2015年4月に産官学が一体となった「中部圏インフラ用ロボットコンソーシアム」を立ち上げました。

そして2018年5月、岐阜県の横山ダムで主放流予備ゲートにおける水密ゴムの不具合を確認する目的で、パナソニックの水中点検ROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操作型無人潜水機)が採用されました。


導入理由

本体サイズの小ささと、鮮明画像が採用の決め手

「調査したかったのは、主放流予備ゲートの水密ゴムと放流管の戸当たりが接触する隙間の状況です。水密ゴムは数年間隔で破損を繰り返し、何か不具合があることは明白でした。しかしゲートを動かした状態で接触を確認するため、潜水士による調査は非常に危険で点検できませんでした。さらに、調査したい隙間そのものが狭く、人の近接撮影も困難でした。

水中ROV候補は2社ありましたが、本体サイズが小さいことと、より鮮明画像が得られることを重視しました」(中部地方整備局 下田貴之様)


導入後の効果

潜水士よりも安全に、効率よく、ブレのない安定した映像を取得

従来の水中点検の撮影は潜水士が行っていました。横山ダムのように主放流予備ゲートを動かした状態で接触部分を確認するには“ゲートを少し動かして撮影”を繰り返し、潜水士はゲートが動く度に放流管から待避します。ゲートの下をくぐって潜水士が何度も出入りするのは危険が伴います。

水中ROVはそうした配慮が不要で撮影時間を短縮できます。また潜水士の撮影映像はブレが生じますが、パナソニックの水中ROVは自律制御により壁面にあわせて常に正対した状態を維持できるので安定した映像が得られます。

高解像度な映像と画像鮮明化技術で原因究明を支援

パナソニックでは、まずお客様とヒアリングしながら点検計画を立案。調査の規模や日数を決定し、現地の下見を行ってから点検を実施します。水中ROVのカメラはフルHD対応で、撮影した映像データは一旦お預かりし、高度な階調補正技術で画像を鮮明化、濁りによるかすみやノイズを除去します。

ただ、損傷箇所がどこにあるのかが不明では意味がありません。撮影した映像地点を把握し、それがどの程度の大きさの損傷だったのかを自動抽出する機能を搭載しています。計画的な補修に活用していただくため、最終的にはこのデータを俯瞰マップに貼り付けて納品しています。

ダム点検をトータルに、ワンストップソリューションでサポート

パナソニックでは水中ROVだけでなく、点検の計画から設備維持管理までを貫くワンストップソリューションを提供しています。ROVの提供ではなく、点検のスタートから映像解析・データ管理まで、ダム点検に関わるワークフロー全体をトータルでサポートします。

実際に開発チームでは「ダムとは何か?」からスタートし、各地のダム見学を重ねて“ダム点検 水中ROV点検サービス”の事業化に取り組んできました。最大深度200 m対応の基本性能や、堤体(ダム本体)のひび割れを確認する点検オプションは、さまざまな調査や聞き取りから生まれたものです。

写真:水中ROV点検システム機器構成
水中ROV点検システム機器構成
写真:水中ROVを積んでダム点検に出動
水中ROVを積んでダム点検に出動
写真:水中ROVを、ボートからも事務所からも遠隔操作が可能
水中ROVを、ボートからも事務所からも遠隔操作が可能
写真:点検のために潜行する水中ロボット(右の鉄壁が主放流予備ゲート)
点検のために潜行する水中ロボット(右の鉄壁が主放流予備ゲート)
写真:姿勢制御システムで常に壁面と正対が可能
姿勢制御システムで常に壁面と正対が可能
写真:鮮明画像化前(左)と鮮明画像化後(右)
鮮明画像化前(左)と鮮明画像化後(右)

お客様の声

画像鮮明化技術により不具合の原因を特定

水中ROVのカメラ映像は、強烈な濁りで詳細がわかりませんでした。しかし画像鮮明化によって明確に異常個所が確認できました。不具合原因は、ゲートのローラーが接する当たり面が腐食して板厚が減肉することで、水密ゴムが適正に機能するための「隙間」が狭くなっていました。水密ゴムの遊びがなくなることでゴムのまくれ込みが起こり、その状態のまま繰り返しゲート操作を行うことで破断に至ることがわかりました。

写真:(左)目的は主放流予備ゲートと上部戸当たりの水密ゴムの点検(右)接触部の隙間を調査するには非常に危険が伴い、潜水士では難しい

システム構成

写真:(左)事務所下の堤体の断面図。堤体内の主放流予備ゲートと上部戸当たりの接触部分の点検が課題。(右)接触部の隙間を潜水士が調査するには、時間もかかり危険も伴うため難しい

導入システム

  • ダム点検 水中ROV × 1台
  • タフパッド FZ‐G1 × 1台
  • 業務支援ソフト
    • コックピットUI
    • 計画アプリ
    • ビューアアプリ

今後の展望

全国のダムで利用が広がってほしい

今回の調査で、改めて水中ROVの可能性を感じることができました。原因が判明すれば対応策を考えられます。こうした事例を機に全国のダムで利用が広がれば、水中ROVがさらに進歩していくのではないでしょうか。

写真:国土交通省 中部地方整備局 防災グループ 防災室 調整係長 下田 貴之様
国土交通省 中部地方整備局 防災グループ 防災室
調整係長 下田 貴之様
※所属は2019年9月現在のものです。

お客様紹介

1964年以来、半世紀以上にわたって洪水被害を軽減

木曽川水系「揖斐川」の河口から約80 km上流に位置する横山ダムは、治水や水資源開発に対する地域からの要請によって建設され、1964(昭和39)年に完成。「中空重力式」という全国に13箇所しかない珍しい型式のダムです。

河川の流量を調節し、地域に住む方々の生活を洪水の危険から守るとともに、発電設備としても地域に貢献しています。

写真:横山ダム
横山ダム
写真:アクセスマップ

関連機器・サービス

製品写真:ROV

ダム点検水中ROV


製品写真:FZ-G1

タフパッド FZ-G1