近畿日本鉄道株式会社様

頑丈タブレット [TOUGHPAD]
多言語車内放送により訪日外国人旅行客への案内サービスを向上。列車内の使用に耐える長時間稼動と頑丈性能が選定の決め手に。

民営鉄道会社として最大級のスケールを誇る近畿日本鉄道様(以降、近鉄様)。その路線には、大阪・京都・奈良、2016年にサミットの会場となった三重県の伊勢志摩など、外国人にも人気のエリアが多くあります。近年、訪日外国人旅行客が急増していることなどの社会的変化を受け、サービス向上の発想のもと、列車内で多言語によるアナウンスを行う多言語車内放送システムの導入を検討。そのシステム搭載端末として頑丈7型タブレットTOUGHPAD FZ-B2を採用されました。2016年3月より、同機を全線の特急列車と、奈良線・京都線・橿原線・天理線の一般列車に導入し、多言語車内放送を実施。日本語に加え、英語、中国語、韓国語での自動音声放送で案内サービスを向上されています。

写真:近畿日本鉄道
近畿日本鉄道
写真:オリジナルのキャリングケースに入れて車掌が持ち運び
オリジナルのキャリングケースに入れて車掌が持ち運び。

ご導入の背景

車掌の携帯時も車両内での設置時も、「安心して使える」端末として選定。大規模な車両改修なしで、短期間での新システム導入を実現

近鉄様が「訪日外国人旅行客への案内サービス向上」と「車内放送の品質向上」を目的とした多言語車内放送システムの検討をスタートしたのは、導入の1年半ほど前のこと。
技術管理部様で企画・構想を練り、近鉄車両エンジニアリング株式会社様(以降、KRE様)で具体的な仕様・システム設計を行う形で、システム開発を進行されました。開発中、特に議論の的となったのが、ハード面の仕様だったそうです。
特急などの一部の車両には既に自動放送システムが装備されていましたが、既存のシステムごと改修するには車両本体の改造まで必要となり、準備期間の長期化が予想されました。そこで、短期での導入を目指していた近鉄様では、車掌が携帯できるタブレット端末を使う案が浮上。KRE様で運用端末の検討が始まったのです。
まず重要視されたのが、端末の稼働時間。車掌の列車乗務時間は長ければ泊まり勤務を含め2日間にわたることもあります。列車内には充電用の設備がないため、乗務中に稼働し続けられるようバッテリー自体の稼働時間が長いことはもちろん、バッテリー交換も想定しておく必要があります。その点、TOUGHPADは長時間稼働かつバッテリー交換も手軽にできるという点が魅力となったそうです。また、端末の使用方法として「車掌が持ち歩くこと」「列車内に設置すること」が決定していたため、持ち運びの際の落下や、列車運行時の車体の振動に耐えられる頑丈さも選定の大きなポイントになりました。さらにKRE様では、鉄道業界ならではのニーズとして、保証・保守対象期間が長期であることにも注目されたそうです。
「車両の部品は長期使用を前提に供給されます。一方、多くの民生用タブレットは、生産・販売後の商品サイクルが短く、長期運用では保守が効きにくいもの。車両設備の一部として運用する端末ですから、故障の度に機種変更では困ります。対して、TOUGHPADは保証期間が長く、部品の在庫も長いという点で安心して導入できました」。 さらに、Android環境でシステムを構築していること、操作しやすいサイズ感という観点で7型の「TOUGHPAD FZ-B2」に決定されました。決定後は、現場の車掌による動作チェックや、車両設置のための簡単な工事、放送装置との連結部の耐久性を高めるためのコネクター製作など細部を詰め、2016年3月、全線の特急列車と、奈良線、京都線、橿原線、天理線の一般列車に乗務する全車掌へ手渡され、運用がスタートしました。

写真:既存のパーツを改造し、TOUGHPADを設置。工事が少ないので導入までのスピードも向上(左:設置前、右:設置後)
既存のパーツを改造し、TOUGHPADを設置。工事が少ないので導入までのスピードも向上。(左:設置前、右:設置後)

導入のポイント

ポイント1 長時間稼働と交換できるバッテリー
ポイント2 振動や落下にも耐える耐振動・耐衝撃性能
ポイント3 長期運用できる安心の保証や保守体制


導入のメリット

高い操作性で手軽に多言語車内放送を実施。「顧客サービス向上」に加え、車掌業務をサポートし「安全・安心の向上」にも貢献

具体的な運用としては、車掌は列車乗務時に所定の位置にFZ-B2を置き、専用コネクターで列車の放送装置と接続。運行路線や列車の種別(特急・快速急行・急行・準急・普通などや上り下りなど)を画面で選択して設定すれば、あとは運行中の必要なタイミングで画面をタップするだけで自動音声が流せる仕組みになっています。車内で放送する言語は基本的に、日・英の2ヶ国語。ほかに日本語のみのバージョンや、日・英・中・韓の4ヶ国語のバージョンが用意されています。
導入初日、開発関係者は対象の路線に乗客として乗車。各国語とも走行音やお客様の話し声が飛び交う車内でもクリアに聞き取れることを確認し、ほっと胸をなで下ろされたといいます。またお客様からも「訪日外国人対応としては良い取り組みだ」「音質が非常にクリアで放送が聴きやすい」と評価も上々です。奈良や京都など訪日外国人のお客様が多い路線では、特急券が必要であることを知らずに特急に乗車していた外国人客が外国語放送を聞いて気がつき、乗務員に申告されたり、下車されたといった、多言語車内放送による案内サービス向上の成果も報告されました。
FZ-B2の運用を管理する近鉄の技術管理部様では、当初、多言語車内放送システムは簡単ながら何段階かの操作が必要となることから、慣れるまでに時間がかかると想定されていました。しかし、導入後の現場からの報告で、特に問題なくスムーズに使いこなしていることを確認。手袋をはめたままの操作も問題なく、バッテリー稼働時間も十分であるとわかり、安心されたそうです。
実際にFZ-B2を操作した車掌からも、「乗務前に準備しておけば、あとは必要なタイミングでタップするだけで自動的にアナウンスしてくれる」と、導入のメリットを実感するコメントが多数寄せられました。また、一定期間使用した結果、想像以上のメリットを実感されたのが、「自動音声とハンドマイクの切り換えがワンタッチで選べる」こと。アナウンスの改善により、お客様への案内サービスが向上しただけでなく、安全・安心の向上にも貢献したといいます。
近鉄様がその具体例として挙げられたのが、車掌が駅到着前に行う車側確認。通常は列車付近の安全確認と平行してハンドマイクでアナウンスを行う必要がありますが、車内放送をTOUGHPADに任せれば、車掌は列車の運行に欠かすことができない「安全・安心」の確保に専念できます。
近鉄様は、「もし発車時間が遅れたり、駅間が短く、各国語を流す余裕がない場合には、車掌の判断で自動放送を切り、ハンドマイクに切り換えることも瞬時にでき、臨機応変な対応が可能です」と語られました。現在、FZ-B2を導入した路線の拠点となる各事務所にはTOUGHPAD専用のオリジナル収納棚を設置し、ACアダプターを接続。保管・充電も簡単にでき、毎日の運行で滞りなく使用されています。

導入メリット1 操作性向上による車掌の業務負荷軽減
導入メリット2 列車の運行に欠かせない安全・安心への貢献
導入メリット3 訪日外国人旅行客への案内サービス向上

写真:アナウンスを行うタイミングを選択後、放送を行う言語を選択
アナウンスを行うタイミングを選択後、放送を行う言語を選択。
写真:車内で放送する言語は基本的に、日・英の2ヶ国語。ほかに日本語のみのバージョンや、日・英・中・韓の4ヶ国語のバージョンが用意されている
写真:効率的に運用ができるよう事務所には約80台が収納できる充電ラックを設置
効率的に運用ができるよう事務所には約80台が収納できる充電ラックを設置。

TOUGHPADを活用したこれからの展望

社内の別部署でも活用を検討。TOUGHPADでさらなる安全・安心の向上を目指し、様々なサービスの可能性を広げる

TOUGHPADの使用は現在、外国人の乗客が多い路線を中心としていますが、将来的には現場から吸い上げた声にもとづき多言語車内放送システムをさらに充実させた後、全線での配備を検討されているそうです。 「車掌全員が手にしたとき、この端末は別の可能性をもちはじめると考えています」と、近鉄様。その具体的な活用案について、KRE様は、現在はまだ使用していないWi-Fiなどの通信機能や、GPS機能、カメラ機能の活用について語られました。
「将来的には、それらを活用して、様々なサービス拡張を考えています。特に通信機能は将来の拡張性を見据えて選定の段階から重要視していました。例えば今期待しているのは、乗務員とセンター側との情報の送受信。事故・災害などの異例事態に遭遇した際、乗務員が現場の映像を撮影して当該管区の指令所に送信すれば、より素早い対応ができるはずです。また、運転士用の端末として使用すれば、運転支援システムを大きく進化する可能性があります」。近鉄様とKRE様では今後もお客様へのサービス向上のため、運転部門や営業部門など社内の様々な部門と連携してTOUGHPADを使ったサービスを検討されています。

写真:アナウンス文言はPCにて編集し、USBを通じ、TOUGHPADにインストール
アナウンス文言はPCにて編集し、USBを通じ、TOUGHPADにインストール。
写真:USBを通じ、TOUGHPADにインストール

主な納入機器 ソリューション

  • 頑丈7型タブレットTOUGHPAD FZ-B2