筑西広域市町村圏事務組合消防本部様

生体情報、 カメラ映像伝送システム
心電図の映像や傷病者の状態をタフパッドでリアルタイムに伝送。救急現場と病院の情報共有がスムーズになり、重症心疾患の発見率が向上しました。

救急救命士目線の映像や心電図をTOUGHPADでリアルタイム伝送。
病院とより精度の高い情報共有網を構築。

茨城県西部の中心都市である筑西市、結城市、桜川市の消防・救急・救助活動を担う筑西広域市町村圏事務組合消防本部様(以下、筑西消防本部様)。総面積が東京23区の約7割にもあたる面積を担当する同本部では、救急現場での救急処置や搬送の精度を高めるため、継続的に情報ツールの見直しを図られています。その一環として、救急現場から心電図の映像や傷病者の状態をカメラ映像でリアルタイムに伝送するシステム「V-FAST」と、そのシステム運用端末として頑丈7型タブレットTOUGHPAD FZ-M1を県内初導入。救急現場と病院との情報共有をよりスムーズにし、かつ精度の高い情報のやりとりを実現されました。

写真:警防課長 消防司令長 高嶋 幹夫 様
警防課長 消防司令長
高嶋 幹夫 様
写真:警防課長補佐 兼 高度救急救命担当 消防司令 救急救命士 成田 善治 様
警防課長補佐 兼 高度救急救命担当 消防司令 救急救命士
成田 善治 様
写真:警防課 高度救急係長 消防司令補 救急救命士 海老澤 一典 様
警防課 高度救急係長 消防司令補 救急救命士
海老澤 一典 様
写真:筑西消防署 消防司令補 救急救命士 廣澤 征浩 様
筑西消防署 消防司令補 救急救命士
廣澤 征浩 様
写真:救急隊員のヘルメットに装着したウェアラブルカメラの映像を、腰のポシェットに入れたFZ-M1がリアルタイムにエンコードし、病院へ伝送。
救急隊員のヘルメットに装着したウェアラブルカメラの映像を、腰のポシェットに入れたFZ-M1がリアルタイムにエンコードし、病院へ伝送。
写真:救急車内では、FZ- M1をクレードルに設置し、心電図モニターと有線接続。心電図もリアルタイムに伝送。
救急車内では、FZ- M1をクレードルに設置し、心電図モニターと有線接続。心電図もリアルタイムに伝送。

導入の背景

救急現場と病院との高度な情報共有を実現する、ハイスペックな情報通信端末として採用に。

筑西消防本部様の管内では、心臓カテーテル検査など高度な治療ができる医師数が限られるため、「傷病者の状態をより正しく医師に伝え、より的確に搬送や処置を行う」ことがかねてからの課題に。対策として、以前にも茨城県全体で救急車内の心電図モニターの情報を病院へ伝送するシステムを導入。しかし従来システムは病院に専用受信機が必要であり、また受信機の設置環境や確認できる場所に制限があるなど、病院側への負担や制限が多く、結果的に充分に活用できない状況でした。そこで筑西消防本部様に資機材を納入するエイバン商事株式会社様が、心電図モニター映像に加え、車載カメラやウェアラブルカメラの映像をクラウドサーバー経由で伝送する画期的なシステム「V-FAST」を提案。その動作推奨端末、映像伝送端末としてTOUGHPAD FZ-M1を紹介されました。

「FZ-M1とV-FASTによる映像伝送は操作が簡単で、心電図の受信画面も予想以上にはっきり見られました。しかも病院などの視聴側ではPCやタブレット、スマートフォンなど既存の情報端末で視聴でき、負担が小さいのが魅力でした」と、筑西消防本部様。また、医療現場での導入実績が多数あるV-FASTはセキュリティ対策も魅力に。入力映像をリアルタイムで独自形式にエンコードするため、視聴時はURL/ID/PASSを公開された端末のみがアクセスできる専用ブラウザでしか映像を再生できません。システムを開発したインフォコム株式会社様は、このリアルタイムのエンコードを実現するために、家庭用のタブレットとは異なるインテルの高性能CPUを搭載していることをTOUGHPADを推奨機種としたポイントとして挙げられています。また救急現場での使用に耐える堅牢性・防水性など、総合的な性能の高さとコストパフォーマンスの良さからFZ-M1が選ばれました。


導入のポイント

  • 高度な映像処理を可能にするハイスペックCPU
  • クラウドを利用したシステムで導入がスムーズ
  • 運用時に役立つ手袋操作、簡単操作

導入のメリット

重症心疾患の発見率をアップ。
車載&ウェアラブルカメラで現場状況も映像で即時発信。

  1. 細部まで確認可能な心電図を伝送できる
  2. ウェアラブルカメラで傷病や現場状況を即時共有
  3. リアルタイムの情報共有で、救急救命活動の精度を向上

筑西消防本部様は、2015年12月より、FZ-M1とV-FASTの運用を開始されました。導入後は、情報伝達の速さ、質ともに以前と比べて劇的な変化が実感できたといいます。まず速さを改善できた理由は、導入後の伝送フローが大幅に簡略化されたため。心電図モニターとFZ-M1を有線接続し、FZ-M1の電源を入れたら、画面の伝送ボタンを押すだけで心電図モニター画面がリアルタイムに伝送されます。
受信側でも、受信端末画面に表示される受信ボタンを押すだけで視聴開始できます。導入前のフローでは、救急車内の心電図モニターの内容を紙に印字し、並べて携帯電話で撮影。携帯メールで送信した上、病院へ電話していました。筑西消防本部様は、以前のフローは非常に困難だったと語ります。
「救急車内は紙を並べる場所の確保が難しく、走行中は手ブレもします。心電図の波形が判別できるよう撮影するのは大変でした。また撮影中やメール送信時は電話を切る必要があったり、送信準備中にも傷病者の容態が変わってしまうなど、導入前はさまざまな問題がありました。それが一気に解消されましたね」。
そして情報の質の面でも、病院と同等の機能を備えた最新鋭の医療機器を活かし、より精度の高い情報の伝送が可能に。具体的には、以前は送信が難しかった心臓の裏側の波形まで伝送できるため、医師に重大な心疾患を発見してもらえる可能性が高まりました。また当初の目的であった心電図の伝送に加え、外傷などの生体情報の伝送にも、FZ-M1とV-FASTが活用されています。有線接続を救急車内の天井に設置した車載カメラに替えるだけで、ストレッチャー上の搬送者の状態を撮影・伝送することが可能に。
映像を元に救急救命士が拡大処置の許可を受けたり、処置中の指示を受けられるため、緊急時の対応力が高まります。さらに救急車外では、ヘルメットに付けたウェアラブルカメラと接続し、救急救命士目線の動画の伝送にも使用されています。このウェアラブルカメラ映像は、平常時はもちろん、災害時への対策としても期待していると筑西消防本部様。「傷病者一人ひとりの状態はもちろんですが、ウェアラブルカメラであれば大規模な事故や自然災害などの大きな被害を受けた現場の様子も送れるため、病院などの医療施設側の体制を調える助けにもなると考えています」。

写真:病院など医療機関側での心電図の受信画面。デスクトップPC、ノートPCをはじめ、タブレットやスマートフォンでも映像を確認できるため、使用場所が広がり、医師や看護師による確認が容易に。
病院など医療機関側での心電図の受信画面。デスクトップPC、ノートPCをはじめ、タブレットやスマートフォンでも映像を確認できるため、使用場所が広がり、医師や看護師による確認が容易に。
写真:救急車の天井に設置した車載カメラからの映像をPCで受信。FZ-M1の画像処理能力により、クリアな映像が確認できる。
救急車の天井に設置した車載カメラからの映像をPCで受信。FZ-M1の画像処理能力により、クリアな映像が確認できる。

TOUGHPADを活用したこれからの展望

医療機関側の認知度アップに務め、システムの活用をさらに促進。
救急対応の充実に向け取り組む。

筑西消防本部様では、将来的には管内の全救急車にFZ-M1を配備することを予定されています。また各病院など医療機関への働きかけをさらに積極的に行うことで、救急現場での情報伝達網の充実を目指されています。
「消防側の努力として、受け入れ側となる医療機関へより精度の高い情報を発信することは今後も力を入れるべきと考えています。平成30年を目処に、筑西広域管内の公立病院を再編し、新中核病院が整備される予定となっていますから、医療機関の認知や理解を高め、救急医療の対応力を高めたいですね。筑西消防本部での導入事例が伝わり、栃木県のある消防本部でもFZ-M1とV-FASTが導入されたことからも、この取り組みは救急の現場で注目されていると感じています」。
また、活動現場を指揮する指揮隊での使用や、ドクターカーなどでの使用も検討されています。発生の予測がつかない大事故や、日本中で対策が進む、自然災害への対応力を上げるツールとして期待されています。


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